2014年の春、北欧ノルウェー政府は2017年から新たに使用する同国通貨クローネの紙幣のデザインを一般に広く公募していた。募集要項のデザインテーマは「海」であり、さまざまな応募の中から決定されたデザインが公表されたのだが、そのデザインは従来の紙幣デザインのイメージを大きく変えるモザイク調が採用されており、国内外で賛否両論あり少し話題となっていた。Googleなどの検索エンジンを使って「ノルウェー」「紙幣」「デザイン」で検索すればデザインはすぐ見られるだろう。
さて、そもそも紙幣のデザインとはどういったものがあるのだろうか。ここではヨーロッパ24ヶ国で使用されているユーロを例に見てみる。
ユーロの紙面にはヨーロッパそれぞれの時代と建築様式をテーマとした図柄が描かれている。具体的には門や窓、橋が描かれており、これは「人と人を繋ぐ」というコンセプトに沿わしたものである。またユーロは5ユーロから500ユーロまで高さや幅を大きく広くと変化させており、視覚に障害をもつ方にでも、その額が分かるように工夫されている。同じように5ユーロから500ユーロまで交互に暖色系と寒色系に割り振っており、色の識別につき障害をもつ方が、間違えにくいような工夫もされている。
上記のように使用するシーンに配慮したデザインがなされており、コインや紙幣も人が使う道具の一つにすぎないと認識させられる。単にグラフィックのデザインだけ、というわけではないのである。
(Betonacox Design)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。