「認知症コスト」と「健康維持コスト」~認知症予防にどのくらいのコストをかけるべきか?


今月8日付けの毎日新聞ネット記事によると、認知症の人の数は2025年に最大で約730万人になるとの厚生労働省研究班の試算が明らかになったとのこと。認知症の人は2012年時点で約462万人、65歳以上の7人に1人であるところ、2025年には65歳以上の5人に1人になるわけだ。

そもそも、認知症とはどういうものなのか?厚労省によると、次のようなことを指す。

脳は、私たちのほとんどあらゆる活動をコントロールしている司令塔です。それがうまく働かなければ、精神活動も身体活動もスムーズに運ばなくなります。

認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。

認知症を引き起こす病気のうち、もっとも多いのは、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく「変性疾患」と呼ばれる病気です。アルツハイマー病、前頭・側頭型認知症、レビー小体病などがこの「変性疾患」にあたります。

続いて多いのが、脳梗塞、脳出血、脳動脈硬化などのために、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなり、その結果その部分の神経細胞が死んだり、神経のネットワークが壊れてしまう脳血管性認知症です。

2012年時点での『認知症ピラミッド』は添付の図表の通りで、頂角の黄色い部分(約462万人)が「認知症有病者数」。正常と認知症の中間の人である「MCI」も含めて広めに捉えると、認知症又はその予備軍は862万人にのぼる。

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(出所:厚生労働省)

この『認知症ピラミッド』において、上層の人々を下層の人々が支えなくてはならない。しかし、より根本的には、認知症になる人を減らし、健常者のままでいる人を増やすようにする必要がある。

認知症にならないためには、どうすれば良いのか?健常者でいるためには、どうすれば良いのか?生活スタイルを改善・維持するべきなのか、食事を改善するのか、薬に頼るのか、機械・器具に頼るのか?

言い換えれば、認知症にならないための『健康維持コスト』の金額について、どのように考えていけば良いのか?

認知症介護にかかる費用は、例えば介護保険 ・地域密着型サービスを利用する場合、要支援1〜要介護5で月々5万円〜36万円(うち自己負担は5千円〜3万6千円)、年間60万円〜432万円(うち自己負担は6万円〜43万円)。

こうした“認知症コスト”との比較で考えていくと、認知症にならないための『健康維持コスト』として支払っても良い金額が、おのずと想定できるのではないだろうか。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。