今年の世界経済を予想する


今年のグローバルマーケットの最大の関心事は米国の利上げだろう。利上げとは政策金利を上げることだが、これは米国経済が回復したという表れといえる一方、利上げによって企業や個人など資金の借入側にとっては負担増になることから経済活動の足かせとなり遅かれ早かれ株価の失速が警戒される。また、金利の高まる米ドルは相対的に魅力度が増すため円安米ドル高のトレンドが続き、日本では輸入物価が上がるインフレが加速するだろう。

日本においてはアベノミクスのもと、日銀が国債や指数連動のETFの購入を続けている。日銀は日本で唯一の発券銀行であり、購入資金はいくらでも用意することができる。このようなことをすれば日本円の価値が下がり、物価が上がるし、為替相場も円安になる。日本はデフレ経済を脱却し、数十年単位でのインフレ経済への転換点にいると考えることもできそうだ。株価も1つのモノの価格だと考えれば数十年単位で株価は上昇するだろうと思われるが、もちろん安定的に上昇するわけでなく、短期的にバブル崩壊など株価の乱高下を繰り返しながらとなる。

2015年の株式市場は利上げを意識して神経質な展開が予想される。少なくとも2013年や2014年は買ってほったらかしでも結果オーライだったが、2015年は突然急落が起きることを想定しておき、いつでも資金を引き上げられる短期的な取引に終始する方が良いだろう。個人的に心配しているのは中国の不動産バブルの崩壊だ。中国から発表される情報は断片的なものであり、中国経済の実態がどうなっているのかは分かりにくいが警戒したい。ある日突然、中国の株式市場が暴落するかもしれない。

為替相場では米国の利上げによって、ゼロ金利政策と量的緩和政策を続ける日本に比べて利回りで魅力的になる米ドルが買われる流れが続くと予想。新興国は自国通貨の防衛のために利上げせざるを得ない状況になるだろうが、これが新興国経済への打撃となるだろう。

コモディティは原油安のトレンドが続いているが、この要因として米国のシェールオイルのシェア拡大に対抗したいという思惑でOPECが減産しないことが注目されているが、米国の利上げ観測により米ドルの価値が上がったことで原油の相対的な価値が下がっていることや、世界的に経済が減速して需要が低下していることも要因になっているように感じる。OPECが大規模な減産をしない限り原油安のトレンドはしばらく続くと見ているが、ベネズエラやロシアなど原油に依存する産油国にとっては大問題であることに加え、原油安による採算割れから米国のシェールオイル関連企業の破綻があれば、破綻企業に融資や投資している金融機関や投資家に損失が発生するので、株式市場にとって好材料とはいえないだろう。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。