(いまさら聞けない)インフレって何?どんな影響がある?


アベノミクスで日本はデフレからインフレになる、という話をよく聞くようになった。日本は長いことデフレ経済にあったのでそもそもインフレって何?という方もいらっしゃるかもしれない。今回はインフレとは何か、私たちの生活にどんな影響があるのか、ということについてまとめてみた。

インフレとはインフレーション(inflation)のことで、平たく言えばお金の価値が下がってモノの価格が上がることだ。例えば、食品の値上げ、牛丼の値上げ、ブランドバックの値上げ、電気料金の値上げ、これらは全てモノの価格が上がるインフレの一例と言える。裏を返せば支払うお金の量が増えるのでお金の価値は下がっていることになる。

デフレとはデフレーション(deflation)はインフレの逆で、お金の価値が上がってモノの価格が下がることだ。ところでインフレに似た言葉でインフラというのがあるがこれはインフラストラクチャー(infrastructure)の略で、道路や水道など社会の基盤となるモノを指す言葉であってインフレとは関係の無い言葉だ。

ではインフレになるとどんな影響があるだろうか?土地や株式など資産を持っている人にとっては値上がり益の恩恵があるだろう。日経平均株価はインフレ期待を織り込んでか2012年末から7割ほど上昇した。また、借金の元本部分も目減りする。例えば給料が10万のときの10万円の借金の負担は重いが、インフレになって給料が20万円になったら負担は半分になる。住宅ローンなど長期間のローンを組んでいる人にとっては悪くない話だ。給料も上がり、借金の金利は変わらないという前提だが。

インフレになっても給料が上がるのであれば良いのだが、そうなるかどうかはインフレの発生過程を考えてみる必要があるだろう。インフレの発生過程には大きく分けて二つあるとされる。1つ目は消費や需要の拡大によるもので、景気が良くてモノの消費や需要が増える⇒生産者はモノの価格を上げたり生産を増やしたりする⇒給料が上がる、仕事が増える⇒消費や需要が増える、という過程でモノの価格が上昇する場合だ。もう1つは原材料の値上がりなどコスト増によるもので、原材料の供給が減ったり、円安によって輸入品が値上がる⇒仕入れの原価が上がる⇒生産者はモノの価格を上げて販売価格に転嫁する、という過程でモノの価格が上昇することだ。前者の場合は給料も上がるので一般的にはハッピーなインフレだが、後者の場合は給料は上がらずにモノの価格は上がるのでちょっと残念なインフレだ。なお、インフレと不景気が一緒に来るとスタグフレーション(stagflation)と呼ばれるマズイ状態になる。

給料が増える、増えないに関わらずモノの価格は上がっていくので何らかのインフレ対策が個人でも必要だろう。インフレ対策として投資をしましょう、という話を聞くことがある。株式投資もその1つだ。株式もモノなので長期的にインフレによって価値が上がると考えられるためだ。しかし株価にはインフレの影響よりも景気動向の影響の方が大きいため、インフレ下にあっても株価が下がることは往々にしてある。インフレ対策のために投資というのは、何十年と保有するつもりなら良いかもしれないが、数年先に使う予定がある資金を値動きの大きい資産に投資するのにはちょっと慎重になったほうが良い。株式投資をするのであれば景気動向を見極めて自身の判断で投資タイミングを検討すべきだろう。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。