GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が日本株の投資比率を引き上げることをニュースで聞いた、という方もいらっしゃるかもしれない。いまさら聞けないけどGPIFって何?という方のために概要を説明すると、GPIFとは厚生年金と国民年金の資産運用をしている年金運用機関であり、運用残高は130兆円を超える世界でも最大級の年金機関だ。GPIFは国債や株式など複数の資産に投資運用しているが、10月末に基本となる資産構成割合を変更することを発表した。日本株は従来の12%から25%にすることが含まれており、株式市場への資金流入期待から株価の下支えになるのではと報道されていた。
GPIFの日本株投資拡大が今回のコラムのテーマではなく、GPIFが同時に公開した日本株の期待リターン6%という数値が今回のコラムのテーマだ。この数値だけを見ると「日本株のリターンが6%?ちょっと楽観的じゃないの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないし、「2012年の配当込みTOPIXは2割超、2013年は5割超上がっているのだからむしろ保守的だよ」と思われる方もいらっしゃるかもしれない。期待リターンを簡単に説明すると長期的に見込める年率あたりの平均的なリターンというものであり、今日、明日、来月、来年の日本株はいくら?といった類の相場予想とはちょっと違うものだ。期待リターンが高い、低い、どうやって推計しているのか?というところが注目されがちだが、実は一緒に公表されている推計リスク(標準偏差)とのセットで見たほうがよいと思われる。
推計リスク(標準偏差)を簡単に説明すると、長期的に見たときに年あたりどれくらいの変動が想定されるかということであり、期待リターンとセットで推計される。GPIFの日本株の推計リスクは25.1%とのことで期待リターンが6%ということは、ざっくりいうと将来の日本株のリターンはおよそ68%の確率で年率6%±25.1%に収まるだろうということを示している。日本株のリターンが31.1%の年があっても-19.1%の年があっても“ほぼ想定どおりですね”ということになる。
ちなみに、期待リターン6%、推計リスク25.1%というGPIFの推計値で12月11日の日経平均終値17257.40円を起点に30年後の日経平均がいくらになるだろうか?という筆者独自の将来シミュレーションをしてみた。30年後の日経平均は発生確率10%の悪い(下落)シナリオで8,000円台(発生確率を下げるともっと悪い結果になる)、発生確率10%の良い(上昇)シナリオで22万円台となった(なお、このシミュレーションは将来の投資成果を保証するものではない。また、期待リターンは配当込みのものである)。ずいぶんと差が出たが、推計リスクが大きいほどブレが大きくなるということであり、良いシナリオと悪いシナリオの差が大きくなる。このように推計リスク次第で想定はブレるので日本株の期待リターンの水準が1%、2%変わったところで推計リスクが変わらなければ大きな影響はないし、期待リターンの数値が高いとか低いとかを議論するのは余り意味のないことかもしれない。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。