“身を切る改革”の費用対効果 〜 消費増税5.2兆円と議員歳費3割削減(▲45億円)


今月14日の衆院選に向けた各党の公約が出揃った。主要政党の公約(自由民主党、公明党、民主党、次世代の党、維新の党)は、それぞれ適宜参照されたい。「身を切る改革」では、維新の党が具体的かつ強烈な提案をしている。

今回の衆院選の争点の一丁目一番地は、社会保障と税の一体改革における消費増税(8%→10%)の延期に関してである。消費増税と言うと必ず出てくるのが、議員歳費・議員定数の削減。これは、“国民負担増をお願いする以上、政治・行政が自ら身を切るべきだ”との思想によるのだろう。その是非はさておき、議員に係る経費削減という趣旨で考えるとして、議員歳費の削減額を試算しておきたい。

平成26年度予算ベースで考えると、衆議院議員歳費の総額は100.49億円、参議院議員歳費の総額は50.76億円、合計151.25億円。ここから1〜3割を削減するとして、削減額は15〜45億円にしかならない。消費増税(8%→10%)による税収見込額は5.2兆円。仮に、消費増税の説得材料として国会議員歳費を3割削減するにしても、「45億円減らすので、5.2兆円増やさせてくれ」という相談事となる。これでは取引にならない。〔以上のデータの詳細は、筆者のブログを参照されたい。〕

では、公務員人件費ではどうだろうか。これは、国会議員歳費とは桁が大きく違う大きな話となる。国家公務員人件費の総額は5.1兆円、地方公務員人件費の総額は20.3兆円、合計25.4兆円。ここから1〜2割を削減するとして、削減額は2.5〜5.1兆円に上る。これなら消費増税との取引になる。ただ、次の次の増税には使えない。公務員人件費削減は、公務員嫌いの有権者やマスコミにとって一瞬の溜飲を下げる効果はあるかもしれない。だが、社会保障財源を確保する手法としての持続性はない。

社会保障財源を確保する持続性のある手法とは、社会保障費の削減しかないだろう。他に妙案は思い付かない。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。