2014/11/06

デザイナーと模倣品をへだてるもの「意匠権」(前編)


「偽物を買った人は、偽者です。」「ホンモノの大人になろう。」「だから、私は買わない」

これらは特許庁の模倣品・海賊版撲滅キャンペーンに使われたキャッチコピーである。近年、インターネットで海外から容易に物が購入できることから模倣品や海賊版が増えており、不当競争などを招いて健全な産業の発展を阻害している。そこで経済産業省の外局である特許庁が撲滅のキャンペーンを行っている。この経済の発展という事由も重要であるが、デザイン自体の創作的価値を鑑みると、創造者であるデザイナーの人格的権利を尊重するという意味でも模倣品は絶対に許されないものである。

そんな模倣品の対策として「意匠権」の登録がある。特許と同じように意匠を特許庁に登録することで模倣品を市場から廃除することができる。具体的に意匠とは物品あるいは物品の部分における形状・模様・色彩に関するデザインをいう。また平成19年より現行の意匠法が施行され、画面デザインのうち物品の本来的な機能を発揮できる状態にする際に必要となる操作に使用される画像も保護の対象となっている。

実際に名古屋市の株式会社MGTが開発・デザインした美容用ローラーは模倣品が海外から多く入ってきていたが、意匠登録を行っていたため税関に差止申立を行い、正規品の単価から考えて数千万円以上の損害を抑止した。他にも携帯用魔法瓶やモータースクーター、ダイソンの羽なし扇風機などの模倣品が差止めされている。財務省の報告書によると平成25年の輸入差止件数は28,135件(前年比5.7%増)で過去最高を記録、1日平均で77件、1,700点以上の知的財産侵害物品の輸入を差し止めている。

意匠権を取得する際に、絶対に知っておきたい制度に「部分意匠」がある。以前は一つの製品に独創的で特徴あるデザインが複数箇所含まれていても、製品全体のデザインとしてしか意匠権を取得できなかったため、一部分のデザインが模倣されていても権利を主張できないでいた。そこで平成10年に部分意匠制度が導入され、製品の特定の一部分だけの登録が可能になり、より強くデザイナーの権利が保護されるようになった。実際に部分意匠の利用は年々増加傾向にあり、平成25年の全出願件数の1/3強が部分意匠によるものであった。

意匠権は出願するにあたって特許権に比べて費用が安価なため中小企業にとっても取得しやすい。その上、ある技術を製品化するためには特定の形状が必須といったような場合には意匠権の登録は実質的に特許権に近い効果を得られる。そのためデザイナーだけでなく技術者や経営者にも活用機会はある。後編では実際に意匠権に取り組んだ中小企業等を紹介していく。

(Betonacox Design)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。
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