2014/10/09

災害時になりやすい28の病気と対処法


災害時に病院へ受診する原因は何だと思いますか? 一番に頭に浮かぶのは「ケガ」ではないでしょうか。確かに、災害の種類にもよりますが災害発生から48時間以内はケガで受診する方が多いとされます。では、どんなケガが考えられるでしょうか?

頻度の多いものとしては、「切り傷」「打ち身」「骨折」「やけど」などが挙げられます。それぞれに必要な対応を挙げてみましょう。

■ 切り傷
小さな切り傷であれば必ずしも受診する必要はありませんが、大きな切り傷では縫合が必要となります。

■ 打ち身
手足の打撲であれば必ずしも受診する必要はありませんが、頭を打って頭蓋内に出血した場合、胸を打って肺が破れた場合、お腹を打って内臓が傷ついた場合などは緊急手術が必要となります。

■ 骨折
ほとんどの骨折は緊急で受診する必要はありませんが、神経や血管を損傷している場合、首の骨が折れている場合、骨盤が骨折している場合は緊急手術が必要となります。

■ やけど
範囲が狭い場合は必ずしも受診する必要はありませんが、範囲が広い場合は入院での治療が必要となります。

以上のように災害によりケガで入院や緊急手術が必要な状況が発生します。

では少し別の視点に立って考えてみましょう。災害がないとき病院を受診する患者さんはいないのでしょうか?災害時にも普段と同じように病気になる人はいます。そこで、災害時に増える可能性のある病気とそれぞれに必要な対応について挙げてみましょう。

【中枢神経疾患】
■ 脳梗塞・脳内出血
水分を十分に摂れずに脱水となれば脳梗塞を発症する可能性があります。ストレスにより血圧が高くなり脳内出血を発症する可能性があります。脳梗塞・脳内出血の治療の大部分はリハビリテーションですが、脳梗塞のタイプによっては緊急での治療が有効なことがあります。また、意識や呼吸が悪くなった場合は入院して管理する必要があります。

■ くも膜下出血
ストレスにより血圧が高くなりくも膜下出血を発症する可能性があります。くも膜下出血では緊急での手術が必要となります。

■ けいれん
抗けいれん薬を内服できなくなった場合やストレスにより、けいれんが出やすくなる可能性があります。けいれんが続けば病院でけいれんを止める注射が必要となります。

【呼吸器疾患】
■ 風邪・インフルエンザ・扁桃腺炎・肺炎
よくある病気ですが、家が壊れて防寒が十分でない場合、避難所など人が大勢いる場所で生活をする場合、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。また、その風邪をこじらせて肺炎になったりする人も増えます。風邪であれば保温と安静のみが治療ですが、インフルエンザ、扁桃腺炎、肺炎では抗ウイルス薬、抗生物質の投与が必要となることがあります。

■ 気管支喘息発作
喘息の薬を吸入できなくなった場合やストレス、環境の変化、風邪により気管支喘息発作になりやすくなる可能性があります。発作が重症となると入院での治療が必要となります。

【循環器疾患】
■ 心不全
降圧薬を内服できなくなった場合やストレスにより心不全を発症する可能性があります。呼吸が苦しくなると入院での治療が必要となります。

■ 心筋梗塞
抗血小板薬を内服できなくなった場合やストレスにより心筋梗塞を発症する可能性があります。心筋梗塞では緊急での手術が必要となります。 大動脈解離: ストレスにより血圧が高くなり大動脈解離を発症する可能性があります。大動脈解離のタイプによっては緊急での手術が必要となります。

■ 肺塞栓症
避難所での生活では足の静脈の血流が悪い体勢で長時間過ごすことで足の静脈に血栓ができやすくなり、その血栓が肺に詰まる可能性があります。肺塞栓症では入院治療が必要となります。

【消化器疾患】
■ 胃腸炎
水が不足して手洗いが不十分な環境であると胃腸炎を発症する可能性があります。軽症では水分をこまめに摂取していればよいですが、水分を摂れない場合や脱水が高度である場合は入院での治療が必要となります。

■ 胃・十二指腸潰瘍
胃酸を抑える薬を内服できなくなった場合やストレスにより、胃・十二指腸潰瘍を発症する可能性があります。血を吐いたり、血便がある場合は緊急で手術が必要となります。

■ 虫垂炎
よくある病気ですが、虫垂炎では緊急で手術が必要となることが多いです。

■ 痔
温水洗浄便座や柔らかいトイレットペーパーを使用できないことにより、痔を発症する可能性があります。緊急での治療は必要ないですが地味に苦しい思いをすることになります。

【内分泌代謝疾患】
■ 高血糖
糖尿病薬やインスリンを使用できないことやストレスにより、血糖値がさらに高くなる可能性があります。血糖値が高いだけでは緊急の治療は必要ないですが、体がしんどくなったりするような症状がある場合は入院での治療が必要となります。

■ 低血糖
糖尿病を持つ人にはよくある症状ですが、意識が悪くなった場合、点滴の治療が必要となります。

【泌尿器疾患】
■ 尿閉(尿が出にくくなる病気)
前立腺肥大の薬を内服できなくなった場合やストレスにより、尿が出にくくなる可能性があります。尿閉となれば病院で処置が必要となります。

■ 膀胱炎・腎盂腎炎
水分を十分に摂れなかったり、トイレに行くことができなかったり、シャワーを浴びることができなかったりする場合、膀胱炎を発症する可能性があります。また、膀胱炎をこじらせて、腎盂腎炎を発症する可能性があります。軽症の膀胱炎の治療は水分を摂ることですが、軽症以外では抗生物質の投与が必要となります。また、腎盂腎炎では入院治療が必要となります。

【その他】
■ 熱中症
暑さをしのげない環境、水分を十分に摂れない環境では熱中症を発症する可能性があります。軽症であれば冷却と水分摂取でよいですが、重症の場合、入院治療が必要となります。

■ 偶発性低体温症
暖をとれない環境では偶発性低体温症を発症する可能性があります。軽症であれば保温すればよいですが、重症の場合、入院治療が必要となります。

以上のように災害により病気で入院や緊急手術が必要な状況が発生します。

これまでケガや急病について述べてきましたが、さらに、普段から持病で病院に掛かっている人も病院を受診します。調子が良ければ、いつも通りお薬をもらうだけかも知れませんが、災害で持病が悪化することも考えられます。「災害時の慢性疾患」については別の機会に取り上げさせていただきます。

災害時には病院を受診する人が増え、被災して機能が低下している病院は大変な状況になることが予想されます。災害時のケガを防ぐことは難しいかも知れませんが、普段の治療や災害時の注意で予防ができる急病もあります。自分自身を守り、必要な人に適切な医療が届くようにするためには、「普段から病気を予防すること」「災害時に病気の予防をこころがけること」が重要ですね。

(NPO災害人道医療支援会 HuMA 広報ワーキングリーダー/大阪府立千里救命救急センター 医師 夏川 知輝)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。
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