デザイナーと効率をつなぐもの「黄金比」


[ 画像出典: GoldenRatio1 Wikipedia ]

黄金比は最も美しいと比と言われており、ルーブル美術館に展示されているミロのビーナス像やエジプトにあるクフ王のピラミッドなどにも活用されている。建築物に初めて黄金比が使用されたのはギリシャのパルテノン神殿であり、使用者は彫刻家であったペイディアス(紀元前490年ごろ~紀元前430年ごろ)だとされている。現代でも名刺やクレジットカードなどに使用されており、そのような黄金比を使った長方形を黄金長方形という。

黄金長方形の特徴は、正方形ができるように分割すると片方の長方形もまた黄金長方形になることである。当然その新しくできた黄金長方形を正方形ができるように分割するとさらに黄金長方形ができあがる。これは永遠に続く自己相似の入れ子構造であり、この完璧といえる規則性は非常に美しくもあり、またいつまでも歪みがないということは全く無駄がないことを意味し、究極の効率性とも言える。

そして、この黄金の効率性に必然がごとく行き着いたものが生物の進化である。繰り返される黄金長方形を弧で連続的に結んでいくと自己相似の螺旋ができあがり、そういった螺旋はオウムガイや羊の角の形、ヒマワリの種やバラの花びらなどに見うけられる。その効果は「より多く配置できる」や「より多く日光を取り入れられる」などであり、まさに効率化を突きつめた結果といわれている。

 [ 画像出典:NautilusCutawayLogarithmicSpiral Licensed under CC BY-SA 3.0 via ウィキメディア・コモンズ ]

工業製品においてプラットフォームや標準化などコスト面などの理由で効率を追い求めることはときに製品デザインの制約を強くすることになり、効率とデザインはあまり親和的でないように語られることもある。しかし、黄金比のように美しさと究極的な効率化の相関を認識し、逆にデザイナー独自の目線で効率化をつきつめるVE(Value Engineering)などを行ってみることで面白い結果が得られるかもしれない。もしかするとエンジニアであり芸術家でもあったレオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザに黄金比を使った気持ちも分かるかもしれない。

(Betonacox Design)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。