最近ニュースで米国の利上げの話を聞かれたことがあるかもしれないが、そもそも投資に縁遠い方には何のこと?と思われるかもしれないし、投資をしている方の中にもどんな影響があるのか整理できていない方もいるかもしれない。今回は米国の利上げによってどんなことが起こりうるのかまとめてみた。
まず、そもそも利上げとは何か、というと米国の中央銀行(FRBという)が政策金利を上げることだ。なんだそれだけのことかと思われるかもしれないが、これが経済、さらには私たちの生活に与える影響が大きいのだ。利上げ決定の前後で次のことが起こるだろう。
■株価が下がる?
金利が上がると株価が下がる、これは投資の定石だ。多くの企業は銀行から資金を借りて事業を行うが金利が上がると返済額が増えるので利上げは業績悪化につながると考えられるためだ。米国企業の業績悪化は取引のある世界の企業に影響するため、米国の株安は世界の株安に連鎖すると考えられる。確定拠出年金を導入している企業にお勤めの方で、何らかの形で株式を保有されている方は保有資産を見直してはいかがだろう。
■円安米ドル高になる?
お金を銀行に預けるなら高い金利がつく方が良いと思われるように、米国の金利が上がると米ドルが買われるので円安米ドル高になる。円安は日本の輸出企業には追い風だが、海外旅行には行きにくくなる。また、原発の稼動停止により化石燃料の輸入が増えているが、円安は輸入価格を上昇させるため電気料金の値上げがあるかもしれない。ガソリンやその他輸入品も上昇するかもしれない。最近の為替相場は利上げを織り込みつつあり、すでに円安が進んでいる。
■米国の債券が下落する?
米国の債券に直接投資をされている方が満期まで保有する場合は影響ないが、投資信託などで間接的に債券投資をされている場合は注意した方が良い。金利が上がると債券の評価額は下がるからだ。株安でも債券なら安心とはいかないかもしれない。
■新興国の株式、債券が下落する?
米国の中央銀行がこれまで金利を低くしていたのは企業などが資金を借りやすくするためで、世の中にお金をたくさん行き渡らせ景気を良くし、雇用を支えるのが目的だった。米国からあふれたお金は新興国に流れ込み、新興国の株式や債券は買われて米国だけでなく新興国の景気も支えてきた。利上げはこの流れに逆行することになる。新興国に投資する投資信託にも注意が必要だ。
少なくとも以上のことが考えられるのにも関わらずなぜ利上げするのか?と思われるかもしれない。米国の中央銀行が一番恐れているのは物価の上昇、つまりインフレ。お金がたくさん出回るということはお金の価値を下げることになるのでインフレにつながるのだ。インフレは人々の生活を苦しめ、社会不安を引き起こすなど悪影響を起こすと考えられる。米国の中央銀行(FRB)は様々な影響を考えながら慎重な舵取りを求められているのだ。
(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。