デザイナーがうらやむアイデア「テクノうどん」



小坂憲次元文部科学相が会長を務める超党派のダンス文化推進議連が風営法の改正を秋の臨時国会で目指している。踊って楽しむダンスクラブに関しての改正案で、中でも最も大きな議題は深夜営業についてだろう。ダンスクラブは現在の風営法では原則午前0時以降の営業ができなくなっており、需要側の客と供給側の店の両方が不満を持っている。規制によって需要と供給が抑えられているのだから、その業界の発展を著しく阻害しているのは明白である。

そんな規制に抗議するかのように「テクノうどん」なるイベントが行われている。沖縄のバンド「おそるべき」が発案したもので、足元にビニールに包まれたうどんを敷いて、その上でテクノにあわせて踊るというものだ。踊り踏みこねられてコシがでたうどんは調理してその場で食べることができるため、このイベントの主目的はダンスではなくうどん作りであり、午前0時以降も踊っていられることになる。 (2014年7月6日に行われた第4回テクノうどんは午後11時で終了)

とはいうものの所詮は詭弁であって規制をかいくぐるアイデアとしてはバカバカしいことこの上ないのだが、単純にダンスエンターテインメントとして見た場合はどうだろうか。自らのダンスで踏んだうどんを食べるという新しい体験を生み出しており、またダンスのビギナーがうどんを踏むというイメージをもとにステップが踏めて入り始めに良いなどの効果があるため客層の拡大にも繋がっており、魅力的で素晴らしいイベントである。もちろん盛り上がることで規制への抗議にもなり、合法的に午前0時以降に踊れることにも繋がっているだろう。

デザイナーはコストや設計などの要件から理想の形を実現しづらいときが多々あるが、必ず何か解決策はないかとアイデアを捻り出そうと努力しており、その苦悩がデザインの醍醐味の1つでもある。しかし実際にはテクノうどんのように単にマイナスをリセットするだけでなく新しいものを生み出すことでプラスに転換してしまうような秀逸なアイデアを出せることはあまりない。まさに今、よいアイデアが浮かばないことに「うどん」ではなく「じだんだ」を踏んでいるデザイナーがいるかもしれない。

(Betonacox Design)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。