「国民医療費39兆円のうち10兆円は生活習慣病関連」という現実・・・


政府の会議はたくさんあり過ぎて、一般庶民にはどれがどれだかよくわからないことも多いのではないだろうか。今、政府には「健康・医療戦略推進本部」というのがあって、そこの下に「次世代ヘルスケア産業協議会」という会議体がある。読者の誰もご存じないかもしれない。大手マスコミでの扱いも殆どないので、誰も知らないのは仕方のことかもしれない。

それはさておき、この「次世代ヘルスケア産業協議会」が今月5日に提示した資料の中に、「増え続ける国民医療費」というがある。下の資料がそれだ。

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この政府主宰の協議会での肝は、まさに「増え続ける国民医療費」をいかに抑制又は削減していくかだ。そのために、強制的な医療費抑制策を講ずるのではなく、「健康寿命延伸産業」を振興していくことで、結果的に医療費抑制・削減を試みようというわけだ。こうした産業政策的アプローチは一つの望ましい手法ではある。

しかし、これだけでは医療財政の合理化が大きく進むとは思えない。やはり大胆な医療費抑制策を講じていくことが、医療財政の持続可能性を維持していくための最善で最速の方法であろう。

資料の上段に「医療費が毎年増大しており、平成23年度に38兆円を突破。今後もGDPの伸びを超えるスピードで増加し、2025年度には約60兆円に達する見込み。国民医療費のうち、医科診療医療費の約3分の1(9.8兆円)は生活習慣病関連」と書かれている。

この書き方はわかりにくいが、要するに、生活習慣病関連の医療費約10兆円(2011年度)は予防・健康管理サービス産業を振興するという産業政策的アプローチで削減できるであろう、という趣旨だ。

医療界からサービス産業界への権益移転となる。その方が、患者予備軍の人々にとっては好い話ではある。是非とも進めていくべきだ。もちろん、敵は岩盤よりも固い。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。