2014/04/17

デザイナーと法律学をつなぐもの「錯誤」


プロダクトデザインやインタフェースデザインの分野では、人の特性からアイデア展開することが多い。人の特性には、動作を誘発させるアフォーダンス、膨張色を利用した錯覚、認知/判断/操作の情報処理プロセスなどがある。関連する学問は人間工学、脳科学、心理学など多岐にわたり、デザインと関連付けた活動も多くなされている。

そんな中、人の特性をリアルに捉える学問でありながら、いまだデザインと結びついていないのが法律学である。民法95条に錯誤というものがある。錯誤とは簡単にいうと「思い違い」であり、95条は思い違いで行った契約は無効であるという条文である。しかし言いようによってはどんなものでも思い違いで結論づけることができ、取引の安全が脅かされてしまう。そこで法律学では人の思い違いがどこまで許されるかを人の意思プロセスから定義している。

1. 動機 (新しく建設される駅の近くは地価が上がるかもしれない)
2. 効果意思 (駅前の甲土地を買おう)
3. 表示意思 (甲土地を管理している不動産屋に買いたいと言おう)
4. 表示行為 (不動産屋に買いたいと伝える行為)

駅前の土地を買う契約をした後に駅の建設が中止になったとして、思い違いを理由に契約が無効になると不動産屋はたまったものではない。このため原則的に動機の錯誤は無効にはならない、といった感じである。

表示行為とは最後のアウトプットであり、インタフェースデザインに置き換えると操作といえる。であれば表示意思とは判断であり、効果意思はインプットである認知になる。まさに認知/判断/操作でありタスク分析などで従来からよく使われている情報処理プロセスと同じである。しかし法律学には動機というプロセスが新たに足されている。

動機をインタフェースデザインで活用すると、例えば自動車のメーターにエコ運転の評価が表示されるとして、評価の点数を葉っぱマークではなく¥マークの数で表すといったところだろうか。それによってエコ運転評価機能の活用度合いが高くなる人がいてもおかしくはないだろう。このようにデザインと法律学を結び付けることで従来にはなかったアイデアを出すことができる。

法律はすべてのケースが書かれているわけではなく、条文の解釈という裁判所の裁量で判決がくだされることがある。選挙で選ばれていない裁判官が裁く定義を決め、人の人生を左右するのだから、その定義は非常に実直に論理を突きつめて構成される。錯誤以外にもデザインと法律学を結び付けられるものはまだまだ多くあるし、人の特性を捉えて目の前のリアルに活用するという意味ではデザインと非常に似ているといえるだろう。

(Betonacox Design)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。
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