「甘いものは別腹」なんて言葉はない!中国女子のおやつ事情



この前、中国の友人とがっつりパスタとピザを食べた後に、衝動的にケーキを食べてしまった。よくこういう炭水化物×炭水化物を食べる場面で、日本人女子は「甘いモノは別腹だから」と言い訳じみたことを言いたがる。はしくれ日本人女子の私も例に倣って言ってみたら、友人に思いっきり変な顔をされた。

「何それ?」

何それと言われても、日本ではこれが当たり前の概念である。お腹一杯であっても、甘いモノなら仮想化された胃の中に入る仕組みである。考え方ひとつで有限を無限に変えてしまう、不思議な呪文が「別腹」なのだ。しかし、それを説明しても、なんだか良く分かってもらえない。そこで聞いてみた。

「甘いモノは別腹に似た中国語あるの?」

「ない」

胃は仮想化出来ないのだから、そんな言葉自体が不要でしょうというのが彼女の見解だ。まぁ、それもそうなのだが。悔しかったので、周囲の女子に聞いて回った。でも、やはり胃の仮想化構造なんぞ誰にも理解されない。甘いものは食べたいけど、そんな理由付けをする必要は無いらしい。

何故中国には「別腹」という概念がないのだろう。そんなことを考えている時、ふと果物を買っている中国人女子が目に入った。彼女たちはいつも一度に大量の果物を買っていく。そんなに一度に消費しきれるのという位に買う。

しかし、これは至って普通のことだ。そこで、気がついた。そもそも、この国のおやつやデザートは点心・果物なのだ、と。質問に応じてくれた子も、おやつ=フルーツの考えを持つ子が多かった。確かに、飯店にご飯を食べに行った後は、点心であったり、フルーツの盛り合わせが出てくるのが当たり前だ。

また、筆者は学生時代に都内のあちこちのケーキバイキングや美味しいケーキ屋を練り歩くのを趣味としていたが、そもそもこの大連にはケーキバイキングなんてない。美味しいケーキを売っている店もそんなに多くない。地方都市ではまだ西洋の文化の浸透が浅いため、西洋製菓の店が流行り始めたのはつい最近のことだから、しょうがないことではある。

そして、お菓子よりも果物の方が比較的安価である。例えば、最近コンビニで売られるようになったシュークリームは約8元(約128円)だとする。8元もあればリンゴかオレンジが2〜3個は買える。また今の時期であればイチゴを500gは買える。しかも、果物を売っている人は道のあちこちに居るので、容易に手に入ると言うのもポイントだ。安いし、尚且つ栄養素も取れるのだから、健康志向の高い中国では果物が好まれるのも納得がいく。それに、果物なら水分が多いので、お腹が膨れていても炭水化物よりは比較的入りやすそうだ。

若い世代であれば、ケーキを食べることに抵抗は無い様だが、日本ほど甘いものを求めている女子の数は多くない気がする。それなら確かに「別腹」なんていう言い訳は、この国には必要ないのかもしれない。理由はもっと広範にあるかもしれないが、西洋の文化に有り触れた日本だからこそ、別腹という言葉が生まれた理由になるのではないかと感じた。

(岸 里砂)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解です。