中高年者の介護経験は急増傾向


厚生労働省の「中高年者縦断調査(中高年者の生活に関する継続調査)」は、平成17年10月末に50〜59歳であった全国の中高年者世代の男女に対して、家族や健康、就業の状況を同じ集団に対して継続的に調査しているもの。昨日発表されたのはその第8回調査で、調査対象者の年齢は57〜66歳。調査の概要は次の通り。

1)今回 60〜64 歳の者の就業希望と実態:第1回調査時(7年前)に、「60〜64 歳は仕事をしたい」と希望していた者のうち、今回実際に 「仕事をしている」男は 81.2%、女は 66.3%。

2)今回 65,66 歳の者の就業希望と実態:第1回調査時(7年前)に、「65 歳以降 仕事をしたい」と希望していた者のうち、今回実際に 「仕事をしている」男は 67.5%、女は 57.5%

3)仕事のための免許・資格取得の有無と就業状況:第1回調査時(7年前)に「60〜64 歳は仕事をしたい」と希望していた、現在 60〜64 歳の者のうち、 今回実際に「仕事をしている」割合は、免許・資格を「取得したことがある」男が 82.9%、女が 69.9%

この中に、介護をしている状況について、資料1・資料2のような結果が提示されている。ここ7年の経過において、介護をしている人の数は漸増だが、介護を経験した人の数は急増してきている。

(資料1)


(資料2)


親の介護か、伴侶の介護か、それ以外か、人それぞれであろうが、介護保険サービスへのニーズが高まっていることは、こうしたデータ推移からも容易に察知される。介護保険財政の将来はあまり明るくはない。少しでも費用対効果の高い介護保険サービスを実施していかないと、早晩立ち行かなくなる。

「介護保険制度は、介護が必要な人々の全員に最高の介護サービスを提供するものだ」 ―― そういうことを語る政治は信用できない。

「介護保険制度は、介護が必要な人々の全員に最低限の介護サービスを提供するのがやっとなのだ」 ―― そういうことを国民に語りかけることが政治の役割だ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。