2014/03/04

将軍バッジをあなたはなぜ買うのか? 北朝鮮との国境の街丹東から


大連から高速バスに揺られること4時間。北朝鮮との国境の街、丹東に到着した。

丹東まで片道のバス代は100元(1700円程度)。以前、杭州から蘇州まで新幹線で80元(1360円程度)もかからず行けたことを考えると、若干割高に感じられる。ただ、丹東市内のタクシー初乗りが5元(85円程度)であり大連よりも3元安い。物価も比較的安いことから、地方都市によくある「内需より外需で儲ける」の方程式内なのであろうと感じた。

丹東市は設備製造や採鉱・精製業などの主要産業が有る傍らで、東部に位置する鴨緑江を挟んだ場所に北朝鮮があるという地理的条件から、古くより中朝貿易の基幹都市としての発展を遂げている。また、近年では北朝鮮に関連する観光都市として国内有数の観光都市にもなっている。

実際に市内には数多くの朝鮮製品(主に食料・観光土産)を販売する店や朝鮮料理の店が点在している。また、中国人は北朝鮮へは比較的気軽にいけるため、街のあちらこちらに北朝鮮へのツアーを取り扱っている旅行代理店も数多く存在している。因みに、そのツアーの中には一日中朝鮮料理を食べ続ける「北朝鮮料理堪能ツアー」といったものもあった。


今回筆者は観光名所の一つ<鴨緑江クルーズ>を体験してきた。

このクルーズは、名の通り鴨緑江を船で30分程度めぐるという趣向のもの。ポイントとしては北朝鮮の国境ぎりぎりまで近づき北朝鮮を直に望観できるという点に尽きる。実際に筆者も眼前100m程度先には北朝鮮という距離まで近づけ、人々が何をしているかも鮮明に見ることができた。

しかし、この時感じたのが、船に乗っている中国人観光客らが双眼鏡を片手に新義州を見ているのに対し、こちらを気にする北朝鮮人はあまりいないという不自然さだった。

クルーズに参加した中で一番印象的だったのは、鴨緑江沿岸両地域の発展具合であった。

北朝鮮の沿岸は、道路も舗装されず工場以外大きなビルはなく住居もどこか怪しげで、以前本でみた日本の昭和初期の街の様相と酷似している様子であったの。一方で、中国側の沿岸には、まるであてつけのように高層マンションばかりが立ち並び近代的な装いを見せていた。


国が違うことで、こんなにも極端な経済差異が生まれるのかということに愕然とした。

そういえば以前、中国人の上司とこのような話をしていた。

「今から30年くらい前までは、北朝鮮は裕福な国で、中国は貧しい国であった。朝鮮族の親戚で北朝鮮に嫁いだおばさんが北朝鮮からよく援助物資を送ってくれた。しかし、時代が変わるにつれ、今度は中国が裕福な国になり、北朝鮮が貧しい国となっていた。気が付けば今度は私が物資を援助する側になっていた」

筆者の眼前の景色こそが,この歴史の流れを表象するものに成り得るのではないかと感じた。

しかし、16時頃にも関わらず多くの工場内の敷地内でバスケットボールのような球技をしているグループが、皆笑顔でとても楽しそうな感じで暮らしている様子を見ると、「人の幸せは文明の利器に左右はされない」と思えるところもあった。

さて、クルーズも終わり、鴨緑江付近を散策をしていると道端に露店が数か所あるのを見つけた。そこで北朝鮮の紙幣や煙草、将軍バッジなどの土産品がどれも格安で売られていた。

そこで私は将軍バッチ(金日成、金正日、金正恩それぞれの肖像のものを4つ)を1個10元(170円程度)で購入したら、そこに居合わせた中国人観光客に、

「えーー!なんでそんなもの買うの!?必要ある!?」

と目を丸くしながら驚かれた。中国人と間違われて言われたこの言葉だが、「何故」といわれても何故そのようなことを言われるのかわらないので返答のしようもない。

露店の店主は「将軍製品は中国人はあまり買わないが、日本人とアメリカ人はこぞって買っていく」と彼女に説明をし、彼女はとても不思議そうな目で私を見続けていた。

そうか、中国人にとって北朝鮮にたいする意識はやはり「唯の隣国」なのだ、とそんな当然のことを初めて気がついた瞬間だった。

しかし、私としても一種の好奇心ゆえに買ったということもあるが、確かに漫画のヒーローでもなく芸能人でもない『他国の最高権力者』のバッジを複数買うというのは、客観的に見たら奇妙な光景に映ってもおかしくはない。

そういえば、中国ではニュースで北朝鮮に対する情報を報道することがあるが、その内容は「金正恩がアップルを使っている!」といった他愛も無い情報であり、マイナスな側面を流すことは日本に比べたら断然少ない。そして、日本のマスメディアの様に、北朝鮮の将軍をまるで悪のヒーローのような報道をするような仕方はしない。そのことを考えると、中国人が北朝鮮を、貧しい国として見ることはあっても奇異の対象としてみることはまずないということが想像に難くない。

今回の丹東旅行は、その中国人が持つ北朝鮮への感情と、日本人である私がもつ感情の差異を大きく感じる旅となった。

(岸 里砂)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。
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