安全なはずの「分散投資」に隠された危険なワナ



ウクライナ情勢や中国の景気減速懸念など、海外での出来事が日本経済、日本株の相場に影響を与えることは珍しくない。特に近年は、経済活動のグローバル化やインターネットの普及による情報伝達速度の向上等により、国内外の株式や債券など価格変動のあるリスク性資産の値動きが似通う傾向が高まっている。

投資の基本として語られることの多い分散投資、これは金融資産を国内外の株式、債券、その他の資産に振り分けて投資しましょうということだ。「卵を1つのカゴに集中するのではなく、1つずつ複数のカゴに分ける」という説明を聞いたことがある方もいるだろう。1つのカゴを落としても被害を被る卵は1つだけで済む、ということだ。この投資理論は「まぁ、そりゃ当然だよね」というものだが、実際有効な理論だったと思う。少なくとも分散投資の考え方が発表された50年ほど前においては。

分散投資は株式と債券、先進国株式と新興国株式といった、資産間の値動きの関係が似通っていないこと(専門的にいうと低相関)を前提としている。平常時には分散投資は有効なのだが、リーマンショックなど大きなショック時にはありとあらゆる資産は一斉に換金売りされるため、リスクを分散することを目的としたはずの分散投資はショック時には効果がない。もっとも被害を小さくしたいときに限って卵を載せた全てのカゴがぐしゃぐしゃになるということだ。しかも経済活動のグローバル化で市場ショックは2000年あたりを境に頻繁に起こるようになり、かつ規模も大きくなっている。分散投資をしていれば大丈夫といって現金を残さず、保有資金をすべてリスク性資産に突っ込んで分散投資することは極めてリスクが高い運用だ。

新興国の政情不安が先進国の株式市場に影響を与える、というのは分散投資理論の考え方が発表された50年ほど前には想定されていなかった事態だろう。ではどうすればよいか。まず、株式や投資信託を他人に言われるがまま買って相場を見ずに放置しているのはNGだ。他人任せでは市場ショックで大きな損失を被ってしまう。常に相場をチェックして、怪しい兆候があれば現金化するといった対処を自分でやる必要がある。現金化が早まって上値を取れない、ということもあるが大損するよりましだ。また、株式などよりも数倍の値動きがあるレバレッジ型商品(借金が発生しないもの)を活用し、現金8割+レバレッジ型商品2割などといった運用をすればショック時の損失も最大2割と限定的だ。え、2割も?と思うかもしれないが、リーマンショック前後で日経平均は半値以下になった。ショックが起きてからでは遅いのだ。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。投資判断は自己責任で。