2014/03/11

5倍の学費で得られるものは質よりもプライドか 大連市における待機児童問題

今や日本における社会問題の一つとして取り上げられる待機児童問題。

ここ中国大連では日本のそれとは少し変わった待機児童問題が存在しているようだ。

2014年3月2日付の半島晨報の中に大連市の幼稚園問題について取り上げられた記事があった。

見出しは「腰掛持参で夜通し並ぶ保護者達 すべては子供の名前を署名するためだけに」というものだ。

その内容というのが、某公立幼稚園が60名の子女の入園募集をかけたのだが、先着順での申請になるため募集開始日前日の午後9時には既に40人の保護者が並び、彼らは零下の気温の中で持参した腰掛に座ったり、家族で交代しながら夜を徹して列に並び続けた。結果、午前8時の申請開始の時点では100人以上の長蛇の列が完成していたとのことなのだ。

そんなことを聞くと、この幼稚園が何か特殊なものがあるのかと連想する。

だが、彼らが並ぶこの幼稚園は、そんなとりわけ目立ったものもなく至って普通の幼稚園である。しかも、日本の様に「どの保育園・幼稚園も定員に達していて入れない」というわけではなく、他の私立幼稚園にはまだ十分空きがある状態だ。

しかし、彼らは私立幼稚園への入園を拒むからこそ、極寒の夜の中を並び続けるのだ。

では、なぜ彼はここまでする必要が出てくるのだろうか?

その答えは、「この幼稚園が公立だから」である。

大連では基本的に公立幼稚園の方が保護者ウケはいい。だが、現在大連市の公立幼稚園の生徒数はどこも飽和状態であり、入学が非常に厳しい状態だ。

また共働き家庭がほとんどのため、同居できない家庭は日中は子供を幼稚園にいかせたい。そのため、公立入園を希望する家庭では、空きがでた幼稚園があれば何としてでもそこに子供を入園させようとするのだ。

公立がここまで好まれる理由としては大きく「費用」「教育」の2つに分けられる。

○費用
公立幼稚園にかかる費用が平均300元~500元/月であるのに対し、私立幼稚園の費用は大体2000元~/月。公立の学費は政府によって規定されているので上限額を超えることはないが、私立は規定なしのため増加の可能性が有る。また私立の高い費用を払っても、その費用は「運営費」「設備費」に必ずしも回されるわけではないので、安全面や衛生面に問題がある場所も少なくない。

大連の2012年度月平均給与額が4533元程度とされているが、実際サービス業の人間の平均給与は3000元いくかいかないかである。その中で夫婦共働きであっても一般家庭が私立幼稚園の費用を捻出するのは難しいだろう。

○教育
公立幼稚園の保育士には教育大学卒業者しかなれないが、私立幼稚園にはそのような規定はない。私立幼稚園では外国人を雇うことで語学体制を整え、それを売りとしているところが多いが、実際に教育システムに関しては体系的ではないところが多い。また、公立の幼稚園の保育士が終身雇用が約束されているが、私立幼稚園の保育士は待遇面などの不満から転職を繰り返すことが多いという。

もちろん素晴らしい施設や教師陣をそろえた私立幼稚園も多く存在しているので一概には言えない。しかし、経済的負担も軽く、「良い教育」を子供に与えたいと望む保護者達は、公立幼稚園に

そのため、例え私立に空きが有ろうとも、公立の空きが出るまで「待機」する児童が多くでてくるのだ。

現在、大連市の公立幼稚園にはすでに6.6万の子供がいる。

3年前では市内全幼稚園数における公立幼稚園の割合が8%だったのに対し、現在は50%にまで増加している。市は待機児童発生の対策として、昨年2013年に2000人が入園出来るように新たに10か所の幼稚園を設立したばかりだが、それでもまだ公立幼稚園数は需要数に満たないという。今年は、更に3000人を収容できるように幼稚園の数を増やしていくとのことだ。しかし、恐らくこの先もこの「待機児童問題」は市の課題になっていくであろう。

中国では「値段が高ければ高い程質がいい」というイメージをもっている人が多い。とりわけ、中国人の金持ちは質関係なしに、そのブランド名と金額の高さだけで購入を決めることが多いという。

しかし、現実的に考えて見れば値段が低くてもいいモノはあるし、値段が高くても悪いモノは当たり前の様にある。何が一番大事なのかは、イメージ・ブランドに左右されない本質を見抜く力を自分自身に身に付けることではないのだろうか。

(岸 里砂)

※筆者は「Gadgetwear」のコラムニストです。 本稿は筆者の個人的な見解です。
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