介護ロボットは誰のためか?


アベノミクスの成長戦略には「国民の『健康寿命』の延伸」の重点施策として「ロボット介護機器開発5カ年計画の実施」が掲げられ、介護現場の具体的なニーズに応える安価で実用性の高いロボット介護機器の開発を進めることとされている。多くの国民は、これを知らないか、忘れているかのどちらかであろう。

こうした類の政府決定文書には、何でもかんでも掲載される傾向がある。それは、掲載されるいずれも政策ダマも最も重要なものばかりだからであり、裏を返せば、そうした文書に載らないと優先順位が著しく低くなってしまうことにもなりかねない。

これに関連し、昨年9月12日に内閣府が「介護ロボットに関する特別世論調査」の概要を公表した。要旨は次の通り。

○在宅介護する際に「利用したい」・「どちらかといえば利用したい」は計59.8%。

○介護を受ける際に「利用してほしい」・「どちらかといえば利用してほしい」は計65.1%。

○介護ロボットの魅力について(複数回答)は「介護をする側の心身の負担が軽くなること」(63.9%)、「介護をする人に気を遣つかわなくても良いこと」(41.5%)、「介護を受ける人が自分でできることが増えること」(35.8%)の順。

○介護経験がある人に苦労したこと(複数回答)を尋ねると「排せつ」(62.5%)、「入浴」(58.3%)、「食事」(49.1%)、「移乗」(48.3%)、「起居」(47.7%)の順。

政府は「ロボット介護機器開発・導入促進」のために施策を本格的に打ち始めた。端的に言えば、介護ロボットによって介護人材の代替をしていける領域を広げていこうとするものだ。生身の人間による介護現場をロボットが奪うことになるといった理由で反対する向きもあろうが、そうも言っていられない切実な事情が既に顕在化している。

介護サービス市場はかなりの人材難に直面しているのだ。今後の介護ロボットに係る技術実証動向などにも依るが、介護ロボット導入によって介護保険財政を少しでも和らげることを前提に、介護ロボットを積極的休養に推進していくべきだ。

介護ロボットの導入によって介護人材難が少しでも解消されていくのであれば、それに越したことはない。それほどまでに、介護サービス需要は膨張し続ける見通しなのだ。介護ロボット技術の進歩には目を見張るものがある。

10年後には、今では想像もつかないようなロボットが街中にいるかもしれない。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa