脱却すべきは、デフレではなく“悪しきインフレ”


総務省によると、10月の全国消費者物価指数(CPI)は資料1の通り。これを見ると、相変わらず食料費やエネルギー価格の上昇が全体を押し上げている主因であることがすぐわかる。

<資料1:〔=平成22年基準 消費者物価指数 全国 平成25年(2013年)10月分〕>

マスコミ各社は毎月これを報じているが、このエネルギー価格上昇を原子力発電所の停止による電気代値上げであるとして報じているのは、今のところ1社も見当たらない。こうした報道機関の姿勢も、その発信元である政府の態度も全く解せない。エネルギー価格上昇は『望ましい物価上昇』ではない。

政府はCPIを2%程度に引き上げるとの政策目標を取り下げるべきだ。インフレが必要なのではなく、実質GDPの拡大が必要なのだ。インフレ傾向が必ずしも国民生活に豊かさを体感させてくれるわけではない。資料2をご覧いただきたい。

<資料2:月間現金給与額(平成25年9月)>

これを見るとわかるが、労働者への恩恵はまだまだ現れていない。単純にCPIだけを見つめていても経済社会を俯瞰することにはなっていない。

このような“悪しきインフレ傾向”を止めるのに必要な手段のうち、政府が直ちにできることは、原発再稼働によるエネルギーコスト低減とそれによる電気料金引下げである。“原発停止インフレ”などという愚かな状態から早期に解消しないといけない。

脱却すべきはデフレではなく、“悪しきインフレ傾向”なのだ。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa