少子高齢社会に入り始めた日本で、今後の社会保障費はどのくらい伸びていくのであろうか。政府の見通しでは、次のようなものだ。
2012年度から2025年度まで、「年金」・「医療」・「介護」には若干の変動があるが、「子ども子育て」には殆ど変化がない。現在も将来も1%程度しかないのだ。将来は若者の人口が減っていくので、若い親たちに必要な「子ども子育て」のための社会保障費の配分が増えないことも仕方ないと考えるべきなのか。
そんなことはない。
政府は今年4月に、待機児童解消を強力に進めるためのプランを発表した。それにもかかわらず、社会保障費の配分が高齢者向けに偏重したまま推移する見通しを立てざるを得ないのは何故なのか。
下の表を見ていただきたい。
この色付き地図を見ればすぐに理解できる。「子ども子育て」対策が「年金」や「医療」など高齢者向け対策に比べて著しく冷遇されてきたのは、待機児童対策など保育問題が都市問題してしか捉えられていないからだ。
国会議員の大半は、都市部が選挙区ではない。これでは待機児童対策など保育政策を力強く進めていこうとの政治的機運が全国大で起こるはずがない。上の色付き地図の白地部分にある選挙区の政治家や自治体職員からは、待機児童対策は自分たちには関係ない、との声をしばしば聴く。
これが、この国の姿だ。より根源的には、選挙制度の在り方に行き着く問題である。しかい、「子ども子育て」への冷遇を続けることは、“社会保障制度を支える若者世代を支えない社会保障制度”を続けることに他ならない。
子どもたちは、親のためだけに生きているわけではない。
(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa)