消費増税でも社会保障はまかなえず 年金・医療抑制が課題


現在も将来も、国の財政の中で最も大きな割合を占めるのは「社会保障関係費」である。年金、介護・医療、子ども子育て、生活保護などだ。しかし、社会保障だけが重要なわけではない。国防のための「防衛関係費」、地方自治のための「地方交付税」、教育などのための「文教及び科学振興費」、インフラ整備のための「公共事業関係費」、エネルギーや食料などのための「その他」、国の借金を返すための「国債費」なども重要だ。これら重要な予算項目は、どのように推移してきているのだろうか。

それを表したのが、下のグラフである。


これを見ると一目瞭然だが、社会保障関係費の増加傾向は突出しており、他の予算費目は横這いが漸減となっている。2000年代以降、社会保障関係費の増えた分を公共事業関係費を減らして充ててきたように見える。実際、その通りだ。来年4月の消費増税(税率5%→8%)、再来年10月の消費増税(税率8%→10%)は、社会保障関係費の増分を賄うものとされており、他の予算に振り分けられることにはなっていない。

消費増税では賄い切れない部分も多い。そうなると、他の予算費目から流用するか、国債の発行(つまり借金)に頼る方法しかない。だが、どれもこれも重要な既得権益ばかりであり、公共事業関係費の減らした分を社会保障関係費に充てるような方法は、もうできない。公共事業をこれ以上削ることはできない。他の予算費目も同様だ。社会保障のために削る既得権益はもう無い。

借金以外の方法では、社会保障関係費を削るしかない。社会保障関係費が増えるからと言って、増税や保険料引上げがそう簡単にできるわけではない。社会保障関係費のうち、 年金が5割弱、医療が3割強である。他の社会保障予算項目は、金額的には年金・医療には到底及ばない。

だから、社会保障財政はもちろんのこと、国家財政全体のことを考えると、年金・医療に関する歳出抑制が、今後の政治の最重要にして最難関の課題である。政治にできなければ、誰にもできない。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川 和男 Twitter@kazuo_ishikawa