Googleトレンドで見る「シャドーバンキング」問題―今後は「テーパリング」にも注目



7/29のコラム「Googleトレンドで分かる?中国発バブル崩壊のタイミング」で、中国のシャドーバンキング(影の銀行)問題が2007年のサブプライムローン問題に似ていること、Googleトレンドで見られる「シャドーバンキング」の検索ボリュームが高まると株価が下落トレンドに入るかもしれないことについて紹介した。当時のコラムから3カ月が経ったが、今のところ幸いなことにメディアで「シャドーバンキング」が取り上げられることは多くなく、株価も堅調に推移している。ただ、来年の春以降は「テーパリング」というキーワードにも注意が必要かもしれない。

あらためて中国の「シャドーバンキング」についておさらいすると、「シャドーバンキング」とは通常の銀行から資金を借りることができない信用の低い中小企業や地方政府が利用している中国の金融業者を指す。貸し出し金利は銀行融資よりも高くなり、金融業者はこの貸付債権を投資家に高利回りの理財商品として販売している。何が問題かというと、中国経済が減速して借り手からの返済が滞るようになると利払いができなくなり、利払いを裏づけにしている理財商品を保有している投資家に損失が発生することにある。シャドーバンキングの融資額は国際会議で懸念に挙げられるほどに急増しているというのだがはっきりとした実態がよく分からない。2007年ごろ米国で騒がれた信用度の低い借り手向けのローンが焦げ付き、リーマンショックの引き金にもなったサブプライムローン問題と似ていることから中国版サブプライムローン問題と呼ばれることもある。理財商品の販売は中国国内に限定されているが、経済活動がグローバル化している現在においては日本経済にも影響すると思われる。

メディアで「シャドーバンキング」問題が盛んに報じられるほど、心配になった投資家が保有資産の売却に走ることが想定されるため、「シャドーバンキング」という言葉がどれだけ検索されているかをチェックしておいて損はない。検索ボリュームはGoogleトレンドを使えば簡単に把握できる。図は前回のコラム同様、「シャドーバンキング」という言葉がどれだけ検索されているかをGoogleトレンドを使って調べ、日経平均株価の水準を重ねたものをアップデートしたものだ。参考に「サブプライムローン」の検索ボリュームと日経平均株価を比較したものも用意した。前回からの繰り返しになるが、最近の「シャドーバンキング」のトレンドは2007年の「サブプライムローン」が検索トレンドに出始めたばかりの頃と似ている。現在は検索ボリュームが一旦収束している状態だが、次にメディアが「シャドーバンキング」について盛んに報道するようになってきたときには注意が必要だ。

最近検索されるようになってきたのは「テーパリング」というキーワードだ。「テーパリング」とは米国の量的緩和縮小を指す用語のこと。米国は2008年のリーマンショックを発端とする金融システム不安や不景気を打開するため、米ドルを大量に流通させて資金を必要としている金融機関や企業を助けてきた。これを量的緩和というが、量的緩和は例えるならば米国経済という患者に点滴を打っているようなものなので、患者が元気になれば止めなければならない。この量的緩和をいつ止める、つまり「テーパリング」がいつなのかが金融市場の関心事になっている。「シャドーバンキング」問題は「テーパリング」が引き金になるかもしれないので、「テーパリング」の検索ボリュームもチェックしておいた方がよいだろう。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。