介護離職が深刻化 老いた時、どこで生きたいか、どこで死にたいか


日本は今、長寿社会。将来はもっと長寿社会。子どもの数はもっと少なくなる。これが少子高齢社会。高齢者が増えれば、「介護」の世話になる人が増えていく。先ず親を介護する側に立ち、次に自分が介護される側に立つ。そういう人がこれから増えていく。

親に介護が必要となった場合、自分に介護が必要となった場合、どのような介護を望むのか? —— 厚生労働省がこんなテーマの調査を行った。

それによると、(1)親に介護が必要になった場合の家族としての希望と、(2)自分に介護が必要になった場合の本人としての希望は、それぞれ次のような結果になった。

(1)家族としての希望では、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けさせたい」が49%、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けさせたい」が27%。



(2)本人としての希望では、「家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたい」が46%、「自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたい」が24%。



「介護」にはいろいろな種類がある。特別養護老人ホームや老健施設に入所して住むような「施設系」もあれば、近所のデイサービスに通ったり、自宅で訪問介護を受ける「在宅系」もある。上記の厚労省調査からすると、施設系介護よりも在宅系介護のほうに多くのニーズがある。

介護される本人も、介護を頼む家族も、「自宅で家族中心に介護を受けたい・受けさせたい」が少ないのは意外だと思う人は多いかもしれない。家族が介護するのは無償サービス、外部の人が介護するのは有償サービス。介護する側も、介護される側も、外部の人による有償サービスが望ましいと思っている。

自分に置き換えて考えてみる。なるほどその通りかもしれない。親の介護のために仕事に就けない、仕事を辞めなければならない ―― 「介護離職」はだんだん社会問題化しつつある。子どもが年老いた親の面倒を見るのは当然だが、面倒を見る方法はよくよく考えないといけない。

自分が年老いた時、子どもの近くで生きていたいと思うし、子どもの近くで死にたいとも思う。でも、年老いた自分の面倒を働き盛りの子どもに見させるのは、子どもの仕事も生活も人生も奪うことになりはしないか。やはり、子どもには自分の人生を謳歌してもらいたい。今の自分がそうであるように。

(NPO法人社会保障経済研究所代表 石川和男 Twitter@kazuo_ishikawa