帝国データバンクは、大学発ベンチャー企業の実態調査を実施し、その調査結果を発表した。
大学発ベンチャー企業の設立時期は、大学等技術移転促進法(TLO法)が施行された1998年以降増え始め、小泉政権下で実施された「大学発ベンチャー1000社計画」の2003年に最多となった。それ以後は徐々に減少しており、2011年ではピーク時の5分の1程度になっている。
業種別に見ると、サービス業が全体の約半数を占め、中でもサービス業の中でもソフトウェア受託開発などIT関連が多くを占めたほか、特許やノウハウ自体を商材とする技術提供業や経営コンサルティングなどが社数を押し上げた。次いで、製造業が35.4%、卸売業が13.2%と続いた。また、業種を問わず、医療機器や医薬品に関わる企業が多く見受けられ、主なものだけでも13.6%に達しており、大学での研究と親和性が高い分野に集中している。
所在地を都道府県別に見ると、大学数で他を圧倒する「東京都」が27.1%でトップ。次いで、周辺地域の大学のキャンパスを県内に多く抱える「神奈川県」が9.3%だった。また、東京を除く旧帝国大学(大阪、京都、九州、北海道、名古屋、東北)の所在地が軒並み上位を占めたほか、学園都市つくばを有する「茨城県」も存在感を示した。
2012年の売上高を規模別に見ると、「1億円未満」の企業が7割近くを占めた。さらに売上が5000万円に達していない企業が半数近くにまで達し、中小零細規模の大学発ベンチャーが大半を占めることが分かった。2012年の損益状況が判明している企業については、黒字企業が54.6%と過半数を占めた。業歴別に見ると「5年未満」の企業の3分の2が赤字であるのに対し、「10年~15年未満」の企業は約6割が黒字だった。同社によると、5年未満の新しい企業は初期段階の開発費がかさみ、研究者が代表を務める場合など営業面で出遅れるケースが多く、赤字企業が増える原因になっているという。また、全体として黒字企業が多いのは、2002年度から実施された「大学発ベンチャー1000 社計画」を機に設立された企業群が利益を上げていることが要因であると分析している。
調査は、信用調査報告書ファイル「CCR」において2012年(2012年1月~2012年12月期)の売上高が判明した536社の大学発ベンチャー企業を対象に実施した。