前兆があった5・23株価急落


5月23日の日経平均株価は1143円28銭(7.32%)安となり、前日からの下落幅としては歴代11位の記録となった。それまで相場の過熱感を指摘する報道などもあったが、上昇を続ける株式相場に乗り遅れまいと今回の下落の直前に買いポジションをとってしまった投資家もいるだろう。

今となっては後の祭り。損を抱えてしまった投資家も一度気持ちを切り替えて相場と冷静に向き合っていくことが大切だが、同じ失敗をしないことも重要だ。今回、相場急落の兆候はあったのか?また現在の調整局面はいつまで続くのか?という点は押えておきたいところだ。

実は5月23日の急落の兆候を示していた指標がある。相場の過熱感を客観的に見ることができる指標としてプット・コールレシオというものだ。プット・コールレシオとは、オプションやeワラント取引で売る権利を意味するプットと買う権利を意味するコールの取引量を指標にしたものだ。一般的に相場に弱気な投資家は相場下落時に価格が上昇するプットを、強気な投資家は相場上昇時に価格が上昇するコールを購入する。プット・コールレシオはプットの取引量をコールの取引量で割ったもので、プット・コールレシオが高い=プットを買う投資家が多い=弱気な投資家が多い、プット・コールレシオが低い=コールを買う投資家が多い=強気な投資家が多い、ということになる。

この図はeワラント証券が日々公表しているプット・コールレシオだ。青線は日経平均株価、赤線はプット・コールレシオである。昨年11月中旬から日経平均株価は上昇し、プット・コールレシオは低下傾向にあった。ゆるやかな低下傾向にあるうちは相場の上昇局面になる傾向がある。ただし、プット・コールレシオが顕著に低下したところが株価のピークになることがあるので注意が必要だ。今年に入って顕著に低下したのは、まず2013年1月10日の0.15であった。相場の下落を見込んでプットを買う投資家が多くなりプット・コールレシオは上昇したが相場は崩れることなく上昇を続けた。その後もプット・コールレシオの低下は続いたが4月24日に0.06という数年来の最低水準を記録した。しかしここでも相場は崩れることなく上昇を続けた。そして5月22日のプット・コールレシオは再び0.06となった。翌日日経平均は歴史的な急落となった。1月と4月は空振りに終わったものの、今回の急落の兆候はプット・コールレシオに出ていた。


<参考>https://www.ewarrant.co.jp/tools/put-call-ratio/

次に気になるのは今後の相場展開だが、プット・コールレシオが上昇傾向にあるうちは相場の調整局面は続くだろう。ただし、プット・コールレシオが極端に高まってピークをつけたとき、つまり投資家が総弱気になったときに相場の底になる可能性が高い。投資戦略としてはプット・コールレシオが上昇傾向にあるうちは現物株買いは様子見するか、プットを使って積極的に利益を狙うのも一手だろう。プット・コールレシオが急騰してピークをつけたら相場の回復に備えて現物株やコールを買って仕込んでおくのもいいだろう。(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。