昨年8月、消費税増税が2014年4月に8%、2015年10月に10%とする社会保障と税の一体改革関連法案が成立したが、消費税が上がる前に高額品を買っておこうという消費者が増えている。例えば近年低迷を続けていた百貨店の売上高が腕時計などの高級品を中心に回復しつつあったり、週末の戸建て住宅の展示場やマンションギャラリーには購入を検討する来場者でごった返したりしている。
とくに住宅関連の盛り上がりの要因は消費税増税の影響だけではなさそうだ。安倍首相が掲げる経済政策、いわゆるアベノミクスによって将来の不動産価格の上昇や金利の上昇を予想している人が多いのだろう。不動産価格の上昇は既に保有している人には悪い話ではないが、新たに取得しようという人には購入金額の上昇という形で負担増になる。金利というと預金を連想する人が多いだろうが、ローンの金利にも関係がある。金利上昇は新たに住宅ローンを借りようとする人にとってはローン支払い金利が増えることになるし、すでに住宅ローンを借りている人も変動金利で借りている場合は支払金利が増えることになる。そのため住宅ローンを変動金利で借りている人の中には将来の金利上昇を見込んで、固定金利への乗換えを検討している人も多いという。銀行などの住宅ローン相談会も盛況だ。
1997年4月に消費税が3%から5%に引き上げられた際も96年後半に消費者の駆け込み購買活動、いわゆる駆け込み需要が発生してニュース等で話題になっていたが、今回はアベノミクスの影響もあって前回の消費税増税のときよりも大きな駆け込み需要が期待される。
「住宅購入なんて縁遠い話」、「住宅関連企業に勤めてないし、どうせ蚊帳の外だよ」なんて思っている人もいるかもしれないが、住宅を購入しなくても、住宅関連業界で働いていなくても住宅関連銘柄に投資することでこの盛り上がりの恩恵を受けることができるかもしれない。具体的には戸建て住宅供給大手の大東建託(1878)、積水ハウス(1928)、大和ハウス(1925)、ミサワホーム(1722)、パナホーム(1924)、住友林業(1911)、マンション施行大手の大成建設(1801)、鹿島(1812)、清水建設(1803)、マンション供給大手の野村不動産(3231)、住宅関連の建材・設備分野では、アイカ工業(4206)、TOTO(5332)、LIXILグループ(5938)、リンナイ(5947)、新生活に必要な家電・家具の分野ではビッグカメラ(3048)、良品計画(7543)、ニトリホールディングス(9843)が有望だろう。
株式投資であれば住宅購入ほどの資金はいらない。さらに消費税駆け込み需要をテーマにした投資商品を利用すれば株式投資よりも小額で投資を始めることができる。住宅供給が増えることで恩恵を受ける住宅関連企業には注目だ。 (eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。