お昼休みに食べる牛丼は安くなるのか?


2月から米国産牛肉の輸入規制が緩和されたことで、新聞報道によると牛丼に使うバラ肉の国内卸値が3月上旬には13%程度下落する見通しだという。投資家が気になるのは、大手牛丼チェーンの経営にインパクトがあるのか?というところかもしれないが、お昼休みに食べる牛丼が安くなるのか?という点も気になるところ。

そこで、今回は主要牛丼チェーン各社の牛丼について調べてみた。

《すき家》
運営会社:ゼンショー HD(7550)
国内店舗数:1897店
牛丼売上比率:44%(会社発表「牛丼カテゴリー」の売上比率)
牛肉産地:豪州、メキシコ、一部店舗で米国

《吉野家》
運営会社:吉野家 HD(9861)
国内店舗数:1193店(国内)
牛丼売上比率:53%(会社発表「国内吉野家」の売上比率)
牛肉産地:90%以上米国

《松屋》
運営会社:松屋フーズ(9887)
国内店舗数:992店(国内)
牛丼売上比率:94%(会社発表「牛めし定食事業」の売上比率)
牛めし産地:豪州、米国、カナダ、メキシコ
牛焼肉定食産地:米国、カナダ

※店舗数や本稿執筆時の直近の会社発表資料より筆者作成。

国内店舗数トップのすき家は牛丼の材料にほとんど米国産を使っていない。吉野家は米国産牛肉にこだわっているようだ。松屋は牛めしで米国産牛肉を用いているようだが産地の比率は分からなかった。同チェーンの牛焼肉定食では米国産をメインに使用しているようではある。

規制緩和は材料調達コスト、つまり売上原価の低下につながるが、どの程度のインパクトがあるのか各社の「牛丼売上比率×米国産比率×材料費低下率」を計算した。すき家の米国産比率は10%、松屋の米国産使用率は50%とした。材料費低下率は新聞報道を信じて13%低下するものとしよう。

すき家:1%(≒ 44%×10%×13%)
吉野家:6%(≒ 53%×90%×13%)
松屋:6%(≒ 94%×50%×13%)

吉野家は6%程度の売上原価の低下、つまり営業利益増加が見込め、松屋は米国産の使用率次第ではあるが、ある程度の営業利益増が期待できそうだ。すき家は、前述のとおり、現状では米国産牛肉をあまり使用していないので規制緩和の影響はなさそうだ。

もちろん牛丼以外にも牛肉を使うメニューはあるし、各社が産地の変更を行ったりするとこのとおりにはならない。円安進行に伴う材料の輸入価格の高騰があれば、営業利益を圧迫するかもしれない。規制緩和は始まったばかりで、安全な牛肉を安定確保できるか様子をみる必要もあるだろう。

お昼休みに食べる牛丼は規制緩和で安くならないかもしれない。ちなみに各社の原価率は33~36%(注1)だった。牛丼が一杯400円とすると、人件費等は除いて材料費140円くらいで作られているのかもしれない。(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

注1:本稿執筆時の直近の決算短信に記載された前期と今期の売上高÷売上原価の平均。牛丼以外も含まれる点に注意。

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。