大気汚染の拡大で北京は雨の都に?



深刻な大気汚染が問題になっている中国では、大気を浄化するのに人口的に雨を降らせて大気中の粉塵を洗い流す、ということをしているらしい。日本では天候をコントロールすることに違和感を感じるところだが、中国からの報道にはごく普通に「人口降雨」の文字が見られるので、そんなに珍しいことではないようだ。

人口降雨の仕組みはこうだ。ロケットや小型飛行機を使ってヨウ化銀などの微粒子を空に撒き、微粒子の周囲に氷の結晶を付着させることで雨や雪を降らす。北京五輪のときも、開会式に雨が降っては困るということで事前に人工降雨によって雲を消したという話を覚えている方もいるだろう。大気汚染が深刻になればなるほど人口降雨を多用することになるだろうから、今後北京は雨の都として有名になるかもしれない。ただ、ヨウ化銀を含んだ雨を浴びたいと思う人はほとんどいないだろうから、常に傘は手放せなくなるだろう。

人口降雨で大気のゴミを流しても、所詮はその場しのぎ。根本的な解決策にはなっていないので、いずれ中国は環境規制に動き始めるだろう。大気汚染の主な原因は自動車の排気ガスと言われていることから、今後販売される自動車に排気ガスの浄化対策が課せられるかもしれない。排気ガスなどの有害物質を浄化する触媒として、プラチナ(白金)などの貴金属が使われている。プラチナといえばジュエリーを思い浮かべる方もいるだろうが、実は工業用のニーズの方が宝飾品のニーズより多い。中国の大気汚染対策により自動車用触媒としてプラチナの需要が増えることが想像できる。

では、どれくらいの需要増になるのか簡単に試算してみた。2012年の中国の新車出荷台数は報道によると1930万6400台だった。日本金属学会誌(2010)によると、近年の日本車の1台当たりのプラチナの使用量は1.5~2グラムほどだという。2013年も2012年と同じくらい中国で新車が販売され、かつ新車全てに排ガス対策が義務付けられるとすると、販売台数×1台当たりのプラチナ使用量=29~39トンぐらいの需要増になる。ただし、自動車用触媒としてはプラチナの他にもパラジウム、ロジウムなども使われているし、既に排ガス対応済みの新車も販売されているだろうから額面どおりとはいかないまでも、十数トンぐらいの需要増にはなるだろう。英貴金属大手のジョンソン・マッセイ社の「プラチナ2012」によると2012年のプラチナ総需要は251.8トンということなので、中国が排ガス規制に乗り出すとすれば数%~1割程度の価格押し上げ要因になるかもしれない。

プラチナ現物だけでなく、プラチナを対象にしたETF、商品先物、eワラントを通じてプラチナに投資ができる。北京が雨の都になるようだったら、プラチナを投資対象の1つに考えてみてはいかがだろう。(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)

※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。